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「医師主導治験」と「企業治験」の違い 6つのポイントを抑える

企業の臨床開発担当者が、治験を経験していると、医師主導治験も問題なくできると思われがちです。

しかし、企業治験と医師主導治験は明らかに違いがあり、それをきっちり理解している人は少ないです。

そこで、今回は医師主導治験と企業治験の違いを、6つのポイントに絞って、ご紹介します。

気をつけるべきことが事前に把握できると、治験準備もスムーズに進められます。

治験に関する参考図書を準備しておくとよりスムーズです。

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臨床研究における「医師主導治験」の位置づけ

上の図は、臨床研究の全体像です。

治験は、企業治験と医師主導治験に分かれます。

その違いとしては、大きな円が企業治験で、その外側の隙間の部分が医師主導治験というイメージです。

企業治験は、あくまで営利目的なため、企業の採算が合う治験に特化して、行われます。

一方で、医師主導治験は、企業治験の条件に合致しない治験が該当することが多いです。

医師主導治験と企業治験の違い 6つのポイント

医師主導治験と企業治験の違いについて、6つのポイントに絞って、ご紹介します。

医師主導治験での治験届提出とIRB承認の順序は違う

医師主導治験の準備段階において、企業治験との一番の違いは、治験届提出時期とIRB承認時期の関係であると言えます。

企業治験においては、治験届を提出後、治験実施医療機関に当該治験をIRBをにて承認してもらいます。

一方で、医師主導治験においては、治験実施医療機関においてのIRBで承認を得た後に、治験届を提出する手順となります。

治験届提出後の30日ルールは、医師主導治験においても有効です。

30日ルール

厚生労働大臣への届け出をした日から起算して、30日経過した後でなければ、治験を医療機関に依頼してはならないこととされています。

当該届出に関する治験の計画に関し、厚生労働大臣は保健衛生上の危害の発生を防止するため、必要な調査の全部または一部をPMDAに行わせることができることとされています。

治験届に関する注意事項などは、「医師主導治験における、治験届の作成を始める前に読んでおきたいこと」の記事に詳しく書いています。

医師主導治験における、モニタリングのあり方

企業治験におけるモニタリング担当者は、治験責任医師を含めた院内のスタッフとの情報交換をする役割を担っています。

一方で、医師主導治験におけるモニタリング担当者は、治験調整医師から指名を受けて、第三者としての立場で行動します。

語弊があるかもしれませんが、わかりやすい表現をすると、企業治験でのモニタリングは製薬メーカーのMRなどのような立ち位置で関わるのに対して、医師主導治験では、監査役のような立場で関わります。

また、企業治験におけるモニタリング報告書は、治験依頼者によって保管され、外部に提出する必要はありません。

しかし、医師主導治験におけるモニタリング報告書は、モニタリング実施後、速やかにIRBに提出し審議されます。

そのため、医師主導治験においては、院内で作成した症例報告書や必須文書の保管状況、逸脱事項などが、モニタリング報告書によって、院内IRBに赤裸々に報告されます。

医師主導治験のモニタリングについては、「医師主導治験におけるモニタリング実施とモニタリング報告書作成のポイント」の記事でしっかり書いていきます。少しお待ちください。

医師主導治験における、被験者負担軽減費の考え方

企業治験における被験者負担軽減費(治験協力費)については、各治験実施医療機関の規則に基づき、お支払いします。

その規則で指定した金額、一般的にはおよそ7,000円〜10,000円を被験者の訪問ごとにお支払いするケースが多いです。

これは、被験者来院時にかかる交通費、及び時間拘束に伴い発生する、食事代を負担すると言う意味合いがあります。

医師主導治験においても同様に、被験者負担軽減費を設けることができます。

しかしながら、限られた研究費の中からの支払いとなるため、被験者には、必ずしも支払う必要はありません

薬機法やGCP等に規定された制度ではないため、治験審査委員会が認めれば、被験者負担軽減費を支払わないという対応も可能になります。

その代わり、代替の手段で対応することを検討しておきましょう。

たとえば、優先的に診療や会計処理を行うことで、被験者の待ち時間を短縮するなどです。

可能な範囲で、被験者の負担を軽減させる方法を提供しましょう。

治験にかかる費用については、「医師主導治験の費用:補助金や企業からの資金提供を受ける際の注意点」の記事に詳しく書いています。

医師主導治験における、副作用報告に関わる情報収集の範囲と年次報告(定期報告)について

被験者の安全性を確保するためには、安全性情報の収集と報告は大変重要です。

副作用報告については、実施中の治験中に発生したものの他、国内外で発生した安全性情報についても、情報収集する対象になります。

副作用報告の情報収集先
  • 実施中の治験における副作用報告・治験機器不具合報告等
  • 国内・海外で発生した副作用報告
  • 学会・研究会等で発表された副作用報告
  • 医療系の雑誌など

医薬品の場合、1つの有効成分ごとに1つの報告書を作成することになっています(ICH-E2Fガイドラインより)。

これを、治験安全性最新報告(DSUR:Development Safety Report Update)と言います。

製薬メーカーや医療機器メーカーがすでに治験を実施している場合は、重ねて年次報告をする必要はありません

医師主導治験で発生した副作用報告についての情報を、企業に提供することで構いません。

ここで注意する点は、治験届に副作用報告を省略する旨を記載する必要があるということです。

治験届の備考欄に「「自ら治験を実 施した者による治験副作用等報告について」(平成25年7月1日付け薬食審 査発0701第21号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)別添3(3)カに 該当するものについて、その報告を省略する。」と記載すること

1つの治験で2つ以上の有効成分の被験薬等を使用している場合は、別々に報告します。

後から企業等が同じ有効成分の医薬品等の治験を実施する場合は、事前に、治験計画変更届を提出しましょう。

治験計画変更届については、「医師主導治験の6ヶ月ごとに提出する治験変更届書について」の記事に詳しく書いています。

医師主導治験独特の登録システムとは

臨床試験の結果を論文掲載するにあたり、医師主導治験のみに義務付けられている登録システムがあります。

これは、ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors 医学雑誌編集者国際委員会)の主張によるものです。

以下の登録先はICMJEの条件に満たされているため、何れかに登録しておきましょう。

現在は、jRCTへの登録へ一本化されました。

登録は、必ず、被験者登録開始前までに行っておきます。

  • 国立大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)
  • 日本医師会治験促進センター
  • 日本医薬情報センター(JAPIC)

国際機関への周知のため、記入事項に英訳が必須となります。

記入事項は、治験全体の項目が多数あり、システム上の入力条件が厳しく、エラーになることも多いです。

余裕を持って準備しておくか、時間がなければ、経験者に依頼したり、外注するのも一案です。

その際には、キーワードとなる単語やフレーズをあらかじめ決めておくことがコツです。

そうすると、翻訳の見直しにかかる時間が削減されます。

jRCT翻訳を外注ご希望の方は、こちらまでご連絡ください。

医師主導治験と企業治験の治験保険の違い

企業主導の治験においては、「医療費」や「医療手当」の補償が行われています。

一方で、医師主導治験では、「医療費」や「医療手当」の補償が行われません。

理由は、「医療費」や「医療手当」を保険商品に組み込んでいないためです。

これらの項目を組み込むことにより、医師主導治験保険の保険料が、大幅に高くなる可能性があります。

同じGCP省令の元で実施される治験であるにも関わらず、被験者の補償措置に格差が生じているというのが実情です。

治験保険については、「医師主導治験で事前に知るべき治験保険の知識と被験者補償のための確認事項」の記事で詳しく書いています。

まとめ

医師主導治験と企業治験(企業主導治験)の違いについて、ポイントを絞ってご紹介しました。

明らかな違いを事前に知っているか、知らないかで、治験の進め方や治験準備に影響するため、しっかり覚えておきましょう。

  • 治験届の提出とIRBの開催日程が違う
  • モニタリングのあり方の違い
  • 被験者負担軽減費は必ずしも支払う必要はない
  • 副作用報告では注意点がある
  • 医師主導治験独特の登録システムがある
  • 治験保険はカバーする範囲が違う

ほとんどが治験の準備段階で検討すべき、あるいは、実施すべき事項です。

医師主導治験の問題点について、あらかじめ知っておきたい方は、「医師主導治験における問題点や課題に触れ、解決策について考える」の記事に詳しく書いています。

医師主導治験の流れや注意点については、「医師主導治験の流れ・注意点をわかりやすく解説」の記事に詳しく書いています。

2020年8月31日付で発出された薬機法一部改正の通知はこちらにまとめています。

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