治験の開始と共に気になるのが、治験の終了ではないでしょうか。
治験終了の時期や提出書類等については、治験開始時に比べて、情報が非常に少ないです。
今回は、治験終了〜治験終了届を提出するタイミングについてご紹介します。
あらかじめ、治験開始から治験終了までの流れを意識し、治験全体を俯瞰しておきましょう。
医師主導治験の流れと注意点について知りたい方は、「医師主導治験の流れ・注意点をわかりやすく解説」の記事に詳しく書いています。
治験終了に向けて、治験実施医療機関での流れを把握しておく
まずは、治験終了に向けて、終了時の流れを説明します。
下記の4事項が完了したら、各治験実施医療機関ごとに、IRBへ治験終了報告書を提出することが可能になります。
- 全症例の症例報告書のデータが固定され、新たなデータ修正等が発生しないこと
- 全症例報告書に、治験責任医師の署名があること
- 治験薬または治験機器等が医療機関から回収されていること
- 治験実施医療機関の監査が行われていること(必要時)
IRBに提出する治験終了報告書に記載する事項
IRBに提出する治験終了報告書には、主に有効性、安全性、GCP遵守状況を記載します。
それぞれの記載内容については、参考までに下図をご覧ください。
なお、二重盲検試験のために、現段階で結果が記載できない場合は、「盲検試験のため評価できず」と記載しておきましょう。
脱落および中止症例については、理由も記載します。
IRBで治験終了報告後に発生する業務
治験終了で発生する業務はいくつかあります。
- 回収データの統計解析
- 総括報告書の作成
- 総括報告書の監査
- 必須文書や書類の保管
- 必須文書の監査
ここでは、治験終了のための作業チームを結成しておくことをおすすめします。
統計解析や総括報告書の作成について、あらかじめ外注している場合でも、外注任せにすると、なかなか完成しません。
作業チームとして、外注先窓口を決めておきましょう。
必須文書や書類の保管については、継続して保管する必要があるため、担当者と保管場所を決めておきます。
治験に関する記録は、下記のうちいずれか遅い日まで、保管が必要です。
- 治験薬や治験機器について製造販売の承認を受ける日
- 治験の中止または、終了後3年を経過した日
また、製造販売承認を受けた際の保管書類移管について、あらかじめ治験薬または治験機器提供者と契約しておきます。
書類の不備については、監査の際に、必ず指摘されます。
そのため、100%の精度を目指して、作成・保管・管理しましょう。
PMDAに治験終了届書を提出するタイミング
治験終了届書は、以下の2点が完了していれば、PMDAに提出可能です。
- 被験者への対応が全て終了していること
- 治験薬または治験機器等が医療機関から回収されていること
すべての医療機関のIRB審議結果を待たなくても、PMDAへ治験終了届書を提出することができます。
理由は、治験計画届書に必要な項目は、至ってシンプルだからです。
下の図をご覧ください。
治験終了届には、治験実施医療機関ごとに、治験薬や治験機器の「使用数量・回収/廃棄等の数量・被験者数」を記載します。
被験者への対応が全て終了し、治験薬や医療機器の数量確認と回収または廃棄が完了した時を言います。
まとめ
今回は、下記の2点にフォーカスして、お伝えしました。
- IRBへの治験終了報告のタイミング
- PMDAへの治験終了届を提出するタイミング
また、治験終了に向けた取り組みについては、作業チームを結成しておくことがコツです。
綿密なスケジュールの元に治験終了作業を行わないと、数ヶ月はすぐに過ぎてしまいます。
治験を始める前に、治験終了までの過程を知っておくことで、いざ終了に向かった時に、慌てずにすみますね。
治験開始時の治験届に関しては、「医師主導治験における、治験届の作成を始める前に読んでおきたいこと」の記事に詳しく書いています。
治験に関する参考図書はこちらです。