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バーチャル治験とは 〜遠隔でも臨床試験が進む理由〜

 2019/01/23 AI 医師主導治験  

2018年は、日本でバーチャル治験について取り上げられる機会が増えました。

また、COVID-19により、治験のバーチャル化の必要性が話題にされています。

被験者の来院により実施していた治験しか経験していない人が多い中、バーチャル治験ってどういうことか、バーチャル治験に適しているのはどの疾患なのかといった疑問がわいてきますよね。

そこで、今回は、バーチャル治験についての全体像を解説します。

メリットデメリットもご紹介するため、あなたがこれから進めようとしている治験に、バーチャルが向いているかどうかが、わかるでしょう。

また、知識として身につけておくと、いざバーチャル治験を受託することになった時に、非常に役にたちます。

バーチャル治験とは

今までの治験では、被験者を評価するために、被験者の来院と事前に渡している患者日誌から情報を収集するという方法を取っています。

その従来のやり方から、IoTを活用して遠隔で臨床試験のデータを収集し、評価するという手法がバーチャル治験です。

たとえば、被験者が痛みが出た時期を告知した場合、ウエアラブルデバイスで記憶されたデータを追うことで、その瞬間を捉えることが可能です。

ウエアラブルデバイスとは
ウエアラブルデバイスとは、腕や頭部など、身体に装着して利用することが想定された端末のこと

それにより、データの精度が上がり、n数(被験者数)が少なく済む可能性がでてくるでしょう。

また、痛みがあると、行動範囲が狭くなりがちですが、GPS機能を使うことで、行動範囲の広がりを評価対象とすることができます。

モバイルテクノロジーの利用により、新しいエンドポイントとして活用できるようになると、患者のQOLに医薬品や医療機器がどう貢献しているかを確認できるようになるのです。

バーチャル治験を実施することにより、医薬品や医療機器が日常生活を送る上で、有効で安全なのかということがわかるようになります。

バーチャル治験のメリット・デメリット

バーチャル治験を実施する上でのメリットとデメリットをご紹介します。

バーチャル治験のメリット

バーチャル治験を実施するメリットについて、「被験者側から」と「治験を実施する側」から挙げてみます。

被験者側のメリット
  • 治験実施病院から離れた場所に住んでいても参加可能
  • 自宅にいながら治験参加可能
  • 服薬や来院タイミングをデバイスのアラートで確認することができる
  • 日常を普通に過ごせる

被験者にとっての大きなメリットは、被験者の負担が軽減されるという点です。

また、治験に参加したくても、通える距離に治験参加施設が無い場合、治験に参加することができません。

それを可能にするのが、バーチャル治験なのです。

という意味では、治験実施側にとっても被験者のリクルーティングという点で、メリットが大きいですね。

次に、治験実施する側からのメリットを各々挙げてみます。

治験実施側のメリット
  • リクルーティングの期間短縮
  • 開発期間の短縮
  • 被験者離脱率低減
  • コスト削減
  • データが電子化のため、解析しやすい
  • リアルワールドエビデンスが得られる

治験実施する側としては、大きく3つのメリットがあることがわかります。

  • 被験者募集に伴う開発期間の短縮により、コストが削減されること
  • 被験者の脱落率が低下すること
  • 得られたデータの精度が高いこと

各社水面下で開発中のプラットフォームを使用するため、劇的なコスト削減とまではいきませんが、従来より20〜30%のコストカットはメリットですね。

とくに、治験期間の短縮が最大のメリットになります。

また、治験というものが特別なものではなく、被験者の日常に寄り添った方法で実施することができるという点では、被験者にとっても治験参加のハードルが下がります。

さらには、医師主導治験に参加する被験者は、希少疾患など企業が未着手の疾患が対象となることが多いため、必然的に治験参加者の登録率が上がることが予想できます。

治験に関する参考図書を準備しておくとよりスムーズです。

バーチャル治験のデメリット

バーチャル治験には、デメリットも存在します。

バーチャル治験のデメリット
  • ウエアラブルデバイスが破損
  • バッテリー切れ
  • 通信障害
  • コンピュータリテラシーが必要
  • 機械の不備や故障による自己対応
  • 家族や学校のイベントに重なる時の対応
  • 被験者負担軽減費の削減

バーチャル治験では、やはり機械の不備や通信障害によるデータ回収不能になる可能性があることがデメリットです。

また、被験者にとっては、機械の不備等による、交換作業等も治験実施施設から遠いほど、自己対応が求められ、負担が大きくなります。

デバイス管理料に該当させるような形で、何らかの負担軽減費を支払うことを検討したいものです。

病院に来なくて良い分、従来の治験より、被験者の自己管理能力が問われることになります。

そのため、被験者訪問が可能なCRCを配置し、被験者のサポートをするというように、柔軟に対応できる体制を整える必要があります。

バーチャルに適した治験とは

バーチャル治験に適した臨床試験として、機能的側面と評価項目からまとめました。

機能的側面 評価項目
GPS機能

24時間監視可能

録音・録画機能 など

痛みの評価

めまいの評価

脈拍 など

こういったものを組み合わせると、バーチャル治験は、以下のような疾患に向いていると言えます。

  • 慢性疾患
  • 内分泌疾患や糖尿病
  • 皮膚疾患
  • 中枢神経系疾患
  • 呼吸器疾患
  • 希少疾患

一方で、バーチャル治験に向かないケースは、患者の安全性の確保が難しいという理由で、がん領域が挙げられます。

バーチャル治験海外の事例:サノフィ「VERKKO試験」

フランスの製薬会社サノフィは、2016年にヨーロッパで糖尿病を対象としたバーチャル臨床試験を実施しました。

ここで使用したデバイスは、3G対応のワイヤレスのグルコース計で血糖値を自動測定するというものです。

この研究は薬剤をテストするのではなく、代わりにワイヤレスグルコース計に焦点を当てているのが特徴です。

また、この試験では、欧州の規制当局によって承認された、電子インフォームドコンセントを使用した最初の臨床試験でもあります。

被験者募集がFacebookからのみというところも特徴的です。

試験の概要と結果はこちらです。

Facebookを通して60人の被験者が自ら登録。

患者はインフォームド・コンセントに電子的署名をする前に、治験実施医療機関側で電子的患者情報を検討。

試験材料であるスマートワイヤレスグルコース計は、患者に直接届けられた。

自動測定の結果は、患者および研究現場によるリアルタイムのレビューが可能。

VERKKOの結果は、多くの分野で予想を上回りました。

74人が関心を示し、そのうち60人がこの研究に登録した。

コンバージョン率は81%で、通常の試験よりはるかに優れています。

患者の平均年齢は56歳で、何人かの参加者は70歳以上であり、このような技術は高齢者にも適していることを示しています。

試験参加時の患者満足度が高く、ドロップアウト率は9%。

服薬遵守率は18%向上しました。

被験者による治験参加率が高く、研究をより早く完了させるのに役立ちました。

また、調査調整作業に費やす時間が66%短縮されたと推定されています。

VERKKOで使用されているアプローチは、大規模な患者集団を巻き込み、より効率的なアプローチを必要とすることが多い後期試験に特に理想的です。

しかし、オンラインでの患者の募集と参加は、どのフェーズの研究にも役立ちます。

eClinicalHealth Announces Successful Results for an Entirely Remote Online Clinical Trial 」Business Wireより参照

 

日本でもバーチャル治験は普及するか

日本において、バーチャル治験はまだ初歩的な段階であるものの、プラットフォームを提供する企業が先陣を切って進めている段階です。

バーチャル治験だからといって、100%バーチャルである必要はありません。

バーチャルと来院を組み合わせた、ハイブリッド型のバーチャル治験でも十分にメリットがあります。

そのため、日本においても、バーチャル治験は有効的な手段になります。

また、海外と並行して実施されているような国際共同治験においても、バーチャル型で実施するケースが出てくる可能性があります。

バーチャルが壁となって、日本に割り当てられる症例数配分が低くなり、日本人の総データが現象するようなことが無いよう、新たなリクルーティング手法を身につけ、バーチャル治験への関心を寄せておく必要があります。

日本イーライリリーは訪問型治験を実施中

医師が治験に参加した患者の自宅を訪問して検査を行い、治験による治療効果を確かめる日本初の訪問型治験を開始しました。

バーチャル治験ではないものの、本来の病院訪問型とは違う画期的な治験方法です。

現在、中枢神経系疾患領域を対象とした第一相試験を実施中。

今後、オンライン診療やIoTを組み合わせたバーチャル治験に発展していきそうですね。

バーチャル治験の課題

バーチャル治験はメリットも多いですが、やはり、デメリットでも触れたように、課題もあります。

バーチャル治験の課題
  • 高齢者への適応
  • ITリテラシーの低い患者への対応
  • 災害時やイベント発生時の対応
  • バーチャルに対応する被験者の確保 など

日本の高齢者は、欧米諸国の高齢者に比べると、スマートフォンやコンピュータの使用率が低く、ITリテラシーが決して高いとは言えません。

その場合、リクルーティングに年齢的偏りができてしまうことも課題として考えられるでしょう。

まとめ

今回は、バーチャル治験について、メリット・デメリットを含めてご紹介しました。

100%バーチャルで治験を行う必要もなく、必要性に応じて柔軟に考えていきたいものです。

また、企業や病院にとっては、被験者募集や開発期間を早めることで、コスト削減につながることは大きなメリットです。

本来取れなかった、リアルなデータを取得し、日常的に被験者に寄り添うことができる治験は、とてもやりがいがありますね。

医師主導治験の流れと注意点について知りたい方は、「医師主導治験の流れ・注意点をわかりやすく解説」の記事に詳しく書いています。

2020年8月31日付で発出された薬機法一部改正の通知はこちらにまとめています。

ライター紹介 ライター一覧

崎久保準子

治験コンサルタント 今までの自身の経験から、PMDAサイトをベースに医師主導治験に関する情報を提供しています。
過去の経験&得意:企業治験6件・製造販売後調査・安全管理責任者・薬事・品質管理・治験調整事務局・看護師国家資格・手術室・脳外科・心カテ/手術立会い

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