医師主導治験において、企業治験との大きな違いの一つに、「治験計画届書の提出時期」があります。
治験計画届書や治験計画変更届書をPMDAに提出することは、非常に重要なイベントの一つです。
しかしながら、治験計画変更届書の提出を失念してしまったり、タイミングを逃してしまったりする可能性はいつでもあります。
そこで、今回は医師主導治験において、治験計画届書を提出するタイミングにフォーカスして、まとめておきます。また、治験計画変更届書の提出が遅れてしまった時の対処法についても、記載しています。
重要なイベントを逃さないために、また、提出タイミングを事前に知りたい方に必見です。
治験届の14日ルールについて知りたい方は「治験届の30日ルールと14日ルール(2週間ルール)の理解」に詳しく書いています。
治験に関する参考図書を準備しておくとよりスムーズです。
1. 医師主導治験と企業治験では、治験届の届出時期の違いに注意
医師主導治験と企業治験の大きな違いの一つに、「治験計画届書」の提出時期に違いがあります。
企業治験では、治験計画届書がPMDAに受理された後、30日調査を経て、各実施医療機関にてIRB審査があります。(30日調査については、後述してあります。そのままお読み下さい。)
しかし、医師主導治験では、実施医療機関においてIRB審議・承認後、実施医療機関の長による承認を経てから、治験計画届書をPMDAに提出します。
医師主導治験を初めて経験される担当者の方は注意しましょう。
治験届以外に、医師主導治験で知っておくべき違いについては、「「医師主導治験」と「企業治験」の違い 6つのポイントを抑える」の記事に詳しく書いています。
2. 治験計画届・治験変更届・治験終了届の提出に関する注意点
医師主導治験における、治験届書の提出方法には、さまざまな規則があります。経験をしたからこそ伝えられることもありますので、参考にしてください。
PMDAに治験計画届書を提出するタイミングとは
IRBにて承認される時に、ほぼ同時に実施医療機関の長による承認がなされます。
これをもって、治験計画届書を提出することが可能になります。
たとえば、実施医療機関の長による承認が、IRBによる承認日と違う場合があります。
このようなケースは稀ですが、必ず、実施医療機関の長による承認書類を確認してから、治験計画届書を提出するようにします。
治験計画届書は誰が提出するか
治験計画届書は、治験調整医師がPMDAに提出します。実際は、治験調整事務局の担当者が提出作業を行うことが多いです。
治験計画届書の備考欄には、治験調整事務局担当者の名前や連絡先も記載しておきましょう。
また、治験計画届書等については、電子媒体(CD-RまたはDVD-R)とその内容を紙に出力したものに治験調整医師が押印して提出します。
治験計画届書の提出方法
提出方法は、PMDAに持参、郵送または、電子メールで提出します。
<PMDAに持参する場合>
- PMDA 6階東側(受付のない方)にある、「申請・届受付」に持参します。
- 事前連絡は不要で、PMDA 6階の受付に寄る必要もありません。
治験計画届書は控えに受領印を押してもらうため、1枚多く印刷して持参します。
<郵送する場合>
- 医薬品・医薬部外品・化粧品関係の届出の宛先は、PMDA「総合機構審査業務部 業務第一課」です。
- 医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品届の宛先は、PMDA「総合機構審査業務部 業務第二課」です。
治験計画届書は控えをもらうため、1枚多く印刷し、切手貼付済みの返信用封筒(返信先を記載済)を同封してます。- 届出年月日は、PMDAに到着する日を記載します。送付日ではありません。
<電子メールで提出する場合>
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、臨時的・特例的な取扱いとして、治験届及び添付資料については、PMDAへの電子メールによる 提出を受け付けています。
書面提出が可能となり次第、現地に提出することとされています。
押印省略が可能となったため、治験届受領印に代わって、PMDAより電子メールによる書類受領の返信が受領の印となるため、保管しておきましょう。
また、治験機器を輸入する際に必要とする薬監証明の書類にもなります。
電子メールにより届書等が提出された場合、PMDA の受付印が押印された届 書の写し(控え)を治験届出者に返送することはしない。 そのため、治験に係る文書又は記録として、届書の控え(※)を保存する場 合は、電子メールによる届書等の提出後、PMDA における受付が完了した際に PMDA から返送される電子メール(以下「受付完了メール」という。)及び PMDA に提出した届書の写しを保存することで差し支えない。
PMDA
治験計画届書のみならず、治験変更届や治験終了届を提出する際にも同じルールです。
3. 治験届・治験変更届・治験終了届(治験中止届)を提出する時期と書き方
治験届書には以下のように、4種類あります。
- 治験計画届書
- 治験計画変更届書
- 治験中止届書
- 治験終了届書
各届書を提出する時期を3つに分けて解説します。
3-1. 初回に提出する、治験計画届書に関する記載事項・注意点と30日ルール
治験計画届書には、非常に細かいルールがあります。医薬品や医療機器の申請書作成に慣れた、薬事担当者であれば問題なく作成可能です。
しかし、医師主導治験においては、そのような担当者は不在であることが多いです。
<記載事項・書き方>
初めて治験計画届書を作成する方のために、具体的な記載例を提示しておきます。
雰囲気だけでも、掴めたのではないでしょうか。書き方の詳細については、PMDAサイトの「治験届入力マニュアル」で確認できます。
実施医療機関やIRBに関する情報については、治験計画届書に直接記載しません。
別途用意された、エクセルファイルに入力します。
この中で、治験責任医師や治験分担医師の氏名欄には、よみかなを書く欄もあります。事前に把握しておきましょう。
<添付資料>
添付資料については、以下の5点をそろえて提出します。
- 当該治験の実施を科学的に正当と判断した理由を記した文書
- 治験実施計画書
- インフォームド・コンセントに用いられる説明文書及び同意文書(複数の医療機関で同じ内容のものが用いられる場合には、そのうち一つを添付することで差し支えない)
- 症例報告書の見本(治験実施計画書内に、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、不要)
- 最新の治験機器概要書
*しばしば、問い合わせを受けますが、治験計画届書には、治験審査委員会の意見書や、実施医療機関の承認書などの添付は不要です。必要な情報は、「治験審査委員会の設置者の名称及び所在地」になります。
<30日調査について>
治験計画届書を提出した後、30日調査というルールが存在しています。特に医師主導治験は、院内のことですので、すぐに治験をスタートできる状況にあります。
しかしながら、治験計画届書が受理されてから、30日間は、治験に関する準備ができません。具体的には、医薬品・医療機器の搬入を始め、スタートアップミーティングなどが対象になります。
もしも、提出した書類に不備等がある場合は、この間に、PMDA担当者とやりとりをすることがあります。
医薬品や医療機器の入手予定日が決まっている時は、その31日以上前に治験計画届書を提出するようにしましょう。
厚生労働大臣への届け出をした日から起算して、30日経過した後でなければ、治験を医療機関に依頼してはならないこととされています。
当該届出に関する治験の計画に関し、厚生労働大臣は保健衛生上の危害の発生を防止するため、必要な調査の全部または一部をPMDAに行わせることができることとされています。
PMDA 治験計画届出制度
3-2. 治験計画変更届を届け出る時期とイベントを覚えておく
治験計画変更届のタイミングは、5つあります。
- 治験責任医師を変更する時
- 治験調整医師を追加する時
- 実施医療機関を追加する時
- 治験計画届書の記載事項に変更があった時
- 多施設共同治験で、既に治験が終了した施設を削除する時
特に、治験調整医師、治験責任医師、実施医療機関の追加については、原則、変更前に届け出る必要があります。
治験届の事前届出事項については、「治験届における、事前届出事項を届出る時期とは」に詳細に記述しています。
治験の実施に影響を与えない変更事項は、変更後、6ヶ月または1年に一度、まとめて届け出ることが可能です。
<変更後6ヶ月>
- 治験届出者:職名、氏名の変更
- 届出担当者:氏名、所属、電話、FAX番号の変更、追加及び削除
- 治験機器提供者:社名、法人代表者、住所の変更
- 輸入先国の製造業者:名称のみの変更、輸入先国での販売名の変更等
- 実施医療機関:名称、実施診療科、所在地、代表電話番号の変更
- 治験責任医師:職名、氏名変更
- 治験分担医師:氏名変更、追加、削除
- 治験調整医師(届出代表者を除く。)又は治験調整委員会:構成医師の削除、治験調整医師又は治験調整委員会の構成医師の所属機関、所属、職名、氏名の変更
- 治験機器:予定入手数量、予定被験者数の変更
- 治験の準備及び管理に係る業務を受託する者の変更
- 実施医療機関における治験の実施に係る業務を受託する者の変更
- 治験審査委員会の設置者:名称、住所の変更、追加、削除
- 医師主導治験実施後に、企業等が同有効成分の治験薬にて治験を開始した場合の副作用報告の省略報告
<変更後1年>
- 治験分担医師:氏名変更、追加、削除のみの変更
<治験計画変更届書を届け出てから、6ヶ月以内に治験終了届や治験中止届を提出する場合>
それまでに発生した変更事項については、治験終了届書又 は治験中止届書中に記載し、届け出ることで問題ありません。
治験計画変更届書を届け出る項目とは、初回に届け出た内容に変更が生じた場合のみです。 たとえば、治験実施計画書内に記載されている、選択基準や除外基準の変更においては、治験変更届書内に記載箇所がありませんので、治験計画届書の提出は不要です。
治験計画変更届書の提出が遅れた場合
治験計画変更届書の提出が遅れたら、速やかに「遅延理由書」を作成して、提出しましょう。
遅延理由書は、任意のフォーマットで構いません。
「医師主導治験でPMDAに遅延理由書を添付するのはどんなとき?様式は?」の記事に詳しく書いています。
治験計画変更届書の日付は、PMDAに提出する日を記載します。郵送の場合は、郵送する日を記載します。 初回に提出する、治験計画届書とは日付のつけ方が違います。また、IRB承認日でもありませんので、注意しましょう。
治験計画変更届書は、6ヶ月、1年単位でまとめて変更しようとすると、変更事項が漏れてしまうことがあります。
そこで、変更が生じた時点で、治験計画変更届書の変更事項に該当していないか確認することをおすすめします。そして、変更が必要な場合は、治験計画変更届書の変更を提出します。
治験計画変更届書については、「医師主導治験の6ヶ月ごとに提出する治験変更届書について」の記事で詳しく書いています。
3-3. 治験終了届をPMDAに提出する時期とは
治験終了届書は、治験が終了したら、速やかに届け出ます。
治験の終了とは、被験者への対応が全て終了し、治験薬や医療機器の数量確認と回収または廃棄が完了した時を言います。
治験終了届には、治験実施医療機関ごとに、治験薬や治験機器の「使用数量・回収/廃棄等の数量・被験者数」を記載する欄があるためです。
上記が完了したあとであれば、いつでも、治験終了届書を提出することができます。
治験終了時については、「IRBへの治験終了報告およびPMDAへの治験終了届を提出するタイミングとは」に詳しく書いています。
3-4. 治験届に記載する大学番号について
治験届には、治験責任医師の氏名及び職名を記載する欄があります。
特に、各大学に割り振られた決まった番号があるため、事前に確認しておきましょう。
- 氏名
- 実施医療機関における職名(『医師』のみで可)
- 大学番号
- 卒業年
- 氏名よみかな
大学番号については、「治験届に記載する大学番号一覧」より確認してください。
4. まとめ
治験届にかかる事項を解説しました。ポイントを押さえて記載していますので、担当者の方は覚えておきましょう。
提出時期を逃したり、提出方法を間違えたりせずにすみます。
今回は、治験届書について解説しました。これに別途添付する書類には、更に細かいルールがあります。詳細は入力マニュアル等を確認して下さい。
医師主導治験の流れと注意点について知りたい方は、「医師主導治験の流れ・注意点をわかりやすく解説」の記事に詳しく書いています。
私たちはAIに何を期待すべきでしょうか? SAS ® Visual Data Mining and Machine Learning. 機械学習 :分析モデルの作成を自動化します。 https://jamedbook.com/1122-2/ 同様の研究を全国各地で行い、「 高齢者の場合は、1回のワクチン接種でインフルエンザの発症を抑え、合併症を減らす 」という結果が得られたのです。
MaggieGarrido さま
コメントありがとうございます。
AIと臨床開発(ヘルスケア)については、多面的に考える必要があるため、今後記事にして、ご紹介させていただきます。
「 高齢者の場合は、1回のワクチン接種でインフルエンザの発症を抑え、合併症を減らす 」という結果が得られたということ、コストの面からも効果の面からも素晴らしい結果ですね。
MaggieGarrido さま
いただいたコメントより、AIと臨床試験についての記事を作成させていただきました。
参考になりましたら幸いです。
AIで変わる治験のあり方 〜 人工知能と臨床試験の関係をわかりやすく解説 〜